吉田松陰の妹・杉文(楫取美和子)の物語|2015年大河ドラマ「花燃ゆ」

松陰、杉家の敷地で松下村塾を開く

野山獄で囚人相手に授業を行う

 安政元年(1854年)10月24日、吉田松陰は野山獄に収容されます。獄中生活では、本を読んだり、囚人相手に授業を行ったりしたといいます。読んだ本は五百冊以上。また、囚人には古典や歴史を教え、その教育によって、獄中の風紀が一変したともいわれています。安政2年(1855年)12月、松陰は出獄を許され、1年2ヶ月の獄中生活が終わります。

 

松陰の2番めの妹・寿が楫取素彦と結婚する

 この頃、松陰の2番目の妹・寿が楫取素彦と結婚します。松陰は獄中からの手紙で、寿には偏僻な気質があるので子どもに影響を与えないようにと諭しています。

 

杉家での謹慎生活の中で学問を教える

 野山獄から出獄を許されると、松陰は杉家に戻り、三畳半の幽囚室で謹慎生活に入ります。
 幽囚室で松陰は、家族や親戚相手に学問を教えるようになります。やがて、近所の下級藩士の子弟も授業を受けるようになり、さすがに三畳半の部屋では生徒を収容できなくなってきました。

 

松下村塾の名を引き継ぎ、杉家の敷地に松下村塾を開塾

 松陰は庭の物置を八畳一間の塾舎として改築し、安政4年(1857年)11月に完成すると、もともと叔父の玉木文之進が開いていた塾の名を引き継ぎ、松下村塾を開塾します。
 松陰の松下村塾は一方的に師匠が弟子に教えるものであったり、机上の学問のみではありませんでした。松陰が弟子と一緒に意見を交換したり、学問だけでなく登山や水泳なども行っていたといいます。これには学問は学ぶだけでなく生かしてこそ価値があるという松陰の考えがあったのでしょう。明倫館での新米不人気教師の姿は、もうどこにもありませんでした。
 母・滝は寄宿生の衣食の面倒をみたり、風呂の世話をしたりと全面的に協力しました。

 

高杉晋作と久坂玄瑞が入門する

 安政4年には、19歳の高杉晋作や、松陰の妹・文と結婚することになる17歳の久坂玄瑞が入門します。
 晋作は明倫館の形骸化された授業に嫌気が差していたところ、塾生と議論を戦わせる松陰の授業に衝撃を受け、塾に通い始めるようになりました。晋作の父は松下村塾の入門を反対していたので、晋作は夜な夜な遊びに行くふりをして、家から3キロほど離れた塾に通っていたそうです。
 玄瑞は、松陰と同様、九州に遊学した経歴を持ちます。熊本を訪れた際、宮部鼎蔵から松陰の傑物ぶりを聞かされ、入塾に興味を持ちます。最初のうちは松陰の力量を試すかのように、挑戦的な手紙を送ったりします。しかし、何度かのやりとりを経て、その器の大きさに傾倒し入塾を決めます。これが文と結婚する半年前のことでした。

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松陰・文の誕生
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